グルメバーガー屋を開業して3カ月半経って思うこと
グルメバーガー屋を開業して3カ月半経って思うこと
KAKUMEI Burger&Café をOPENして三カ月半が経ちました。
この三カ月半を振り返ってみて準備段階のイメージとの差分や、当初の計画と比較して良かった点と悪かった点、そして現状をこの時期にまとめておこうと思います。
蒲田・蓮沼という街でのグルメバーガーの受け入れられ方
まずは、一番気にかけていたこととして「グルメバーガー」と「蒲田」の相性について。
「ハンバーガー=マクドナルド」というイメージの強い日本です。
それは「ハンバーガー=気軽に食べれて低価格」というイメージとも言えると思います。
モスバーガー、フレッシュネスバーガー、バーガーキング、ロッテリア、ファーストキッチンなどなど方向性は異なりますが「ハンバーガー=気軽に食べれて低価格」という意味では共通しています。
「グルメバーガー」というジャンルは上記の業態とはコンセプトも価格も異なるわけですが、「コスパ重視」と言われる蒲田でどこまで受け入れられるのか。
本当に蒲田という街はコスパ重視の方が多いです。ハイボールが100円くらいで飲めるお店がめちゃくちゃ多いです。もちろん富裕層向けのお店もありますけど価格勝負ってお店がスタンダードな印象です。
で、グルメバーガー屋さんは基本的に恵比寿、青山、原宿、新宿のようなお洒落なエリアや、人が集まる街に多い印象です。
お客さんの思考としても、「せっかくだし美味しいハンバーガーを食べよう!」と来店に繋がりやすいのかなというイメージを持っていました。
もちろん、ここ数年でローカル駅にもグルメバーガー屋さんは増えていますし、その中で人気のお店も多数存在しますが、OPEN直前になっても「蒲田でグルメバーガー」というのは全くイメージが出来なかったです。
蒲田の面白いところは食だけでなく、例えばアパレル業界で見てもハイブランドはもちろん、有名なセレクトショップも無いんですねけど、ユニクロやGUの売り上げは日本トップクラスらしいです。
お客さんにも「なんで蒲田でグルメバーガー?」と良く突っ込まれますが、本当にイメージが結びつかない街なんです。
で、実際どうなのと。
まだ3か月半ですが、有難いことにとても多くのお客さんが来てくれます。
この街のいいところは蒲田という自分の住んでいる街に愛着・関心を持っているという点と、基本的には蒲田に住んでいる・仕事をしている・働いているという方が大半なので生のクチコミが広がりやすいというところです。
なので、地元に新しいお店が出来たらきちんと関心を持ってくれて、良かったら広めてくれるという文化が大きな力になっています。
ただ同時に蒲田は飲食店の数が日本トップクラスなので新しいお店が出来ては消えていくという循環のスピードは凄まじいです。
今のところの3か月半間は、毎月ごとに右肩上がりでお客様は増えていますが、これから1年後にどうなっているか。
一番の常連さんである平日ランチタイムに来てくださる方などは顕著で、ランチタイムだけで見ても圧倒的に金曜日の売り上げが高いので、やはりランチに1000円以上出すことに対しての「ちょっと贅沢」感は強いのかなと。
来てくださったお客さんにリピーターになってもらう施策としてアプリ開発など進めています。
グルメバーガーというジャンルの認知・浸透性
まだ3か月半ですので、蒲田という街でグルメバーガーが受け入れてもらえたかは分かりません。
来店して下さるお客さんの大半は「そもそもグルメバーガーを食べたことがない」という方が、とても多いです。
ただ、それはもともと織り込み済で「受け入れてもらう第一歩」として興味を持ってもらうために準備段階で意識したのは「明らかにチェーンのハンバーガーとは違うというインパクト」を表現することでした。
しかし、「明らかにチェーンのハンバーガーとは違うというインパクト」を作るために、ボリュームを大きくしようとはどうしても思えませんでした。
女性とグルメバーガーを食べ歩いている中でボリュームが大きすぎて食べきれないので残すということがとても多いように感じましたし、僕自身もグルメバーガーを食べている中で後半は苦痛に感じることも多々ありました。
そういったお店にはしたくないし、これからの時代は食材の破棄を予測したビジネスというのは単純に「カッコ悪い」と考えていました。
なので、お肉の食感でインパクトを出そうと。
当店ではKAKUMEIパティとノーマルパティと呼ばれる二種類のパティを使っています。
KAKUMEIパティはステーキ肉を100%使用した分かり易いインパクトがありますし、ノーマルパティにもステーキのブロック肉を配合し肉々しさを大事にしています。
また、牛肉パティ以外の他メニューに関しても「梅紫蘇とんかつバーガー」「柚子フィッシュバーガー」「テリヤキ海苔マヨチキンバーガー」などチェーン店とは被らない初体験のテイストを意識しました。
今のところはインパクトという意味では沢山の興味を持ってもらえているなと感じますが、継続できるか、一回来たお客さんがリピーターになってくれるために成長し続けられるかという点ですね。
実際、常連になってくださっているお客さんの大半は「もともとグルメな方」が多いです。そういう意味ではまだまだ「グルメバーガーを広める段階」ということなのかもしれません。
蓮沼という街について
蒲田のグルメバーガー屋と謳っていますが立地としては蒲田駅と蓮沼駅の間に位置します。
蓮沼駅の乗降人員はJR蒲田駅146,337、東急池上線蒲田駅75,484、東急多摩川線91,538と比較すると、東急池上線蓮沼駅8,463人程度で数パーセントですが周りに競合店が少ないことで目を引きやすく蓮沼周辺にお住まいの方や、隣駅の池上駅にお住まいの方も多くご来店されます。
蓮沼駅周辺には蒲田駅と比べると圧倒的に飲食店が少ないので、その分選んでいただくチャンスはとても高いようです。
どうしても、人の大きいエリアを意識してしまいがちですが、競争の激しくないエリアにもしっかり目を向けることの重要性を痛感しました。
OPEN前のイメージ以上に東急沿線の方々に来ていただけているということは良い驚きでした。
スナック街での出店
蒲田というだけでグルメバーガーのイメージがないのに、更には駅から徒歩5分のスナック街に位置します。
KAKUMEI Burger&Café の位置する通りで、スナック以外の飲食店は当店だけです。
入り辛いと思うお客さんも多いだろうなということで、もともと小料理屋のお店を全面ガラス張りにして少しでも入りやすく!と思ってましたが…やはり入り辛いみたいです。
お店の内装・自由なファッションの店員なども大きな要因でしょうが…。
逆に良かった点も沢山あります。
①まずは何と言っても、スナックのお客さんやママから注文を頂けます。
近くのスナックにお皿のまま配達出来てしまうのは強いなと思いました。
スナックに行ったことがないので、知らなかったのですがあまり飲食物を置いていないので出前などする文化もあるみたいです。
スナックだらけのエリアにハンバーガー屋が出来れば注文してくれると。
また、スナックがあくまで暇だからそれまで当店でお酒を飲んだりハンバーガーを食べていくという方も稀にいらっしゃいます。
②場所が分かり辛いので現在飲食店最強の集客ツールと言われるGoogleMapで滅茶苦茶検索されます。
結果、大田区の人気急上昇店ランキングで1位になるなど、検索されることでより認知を高めるという流れが出来ました。
③ありがたいことに、一番混雑するランチではお客さんの自転車やベビーカーが停め放題!夜もスナックに来るお客さんが自由奔放に自転車を停める文化が定着してしまっているエリアなので自転車人口日本一のエリアとしては非常に助かります。
④人通りが少ない&あまり車が通らない通り沿いのため、わんちゃんの散歩をされている方が沢山いてお店を知っていただけます。
お子様連れの方もそうですが、わんちゃん連れの方もつれていけるお店へのアンテナが強く、またコミュニティも強いので情報の伝達速度と来店への確度はかなり高いです。
このように大通りの店舗と比べてしまうとデメリットの方が圧倒的に多いいですが、その分賃料なども低いですし、上記のようにイメージ外の良い点もありました。
ターゲット層のイメージ(学生さん)
これはまだまだ努力と実績不足の面が大きいですが、「学生さん」の来店はとても少ないです。
来てくれた学生さんたちは二階の座敷席でトランプしたりボードゲームしたりと自由に楽しんでくれているようなので徐々に広がっていくのかなとは感じますがまだまだです。
近くに日本工科大学・日本工学院など日本有数の大型キャンパスもありますが、当店にいらっしゃるお客さんのうち学生さんの割合は1割程度です。
これは立地やコンセプトによると思うので、グルメバーガーと一括りには出来ませんが、僕としては近くに大きなキャンパスや寮があるので、全体の3割くらいは学生さんの流入をイメージしていました。
OPENが12月だったので、冬休み明けの1月中旬からは増えてきてくれましたが…
またすぐに春休み!!!
10年近くも前のことなので忘れていましたが大学生は年間の半分以上が休みなんですね…。
その分、アルバイトの子たちは沢山シフトに入ってくれるので助かりますが…完全に盲点でした。
専門学生に関しては分からないですが試験やら実習が忙しい期間らしいです。
学生さんのお客さんは少ないけど20代のお客さんはやはり沢山来てくれるので、そういった方々のフィードバックを受けながら、コロナが落ち着いて新学期に多くの学生さんが来てくれるように考えないとな・・という状況です。
ターゲット層のイメージ(OLさん、近所のママさん)
イメージ通りだったのは「近くの企業のOLさん」と「近所のママさん」です。
蒲田という街の特性上、大衆居酒屋の勢いがすごいので、お洒落でゆったりできるお店というのはとても少なく、求めている人は一定数いらっしゃるのはデータからも確度は高いと考えていたので一安心です。
また、子供連れで行けるレストランが少ないということは自分の実体験で強烈に感じていたところで、これは間違いなく必要とされると確信出来ていた重要なポイントです。
逆に言うと「この街には子供連れで行けるレストランが必要だ」という確信を持てるポイントがなければ蒲田でお店を出すことはなかったと思います。
自分もそうでしたが子育て世代は自転車での移動がとても多いので、お子様連れのお客さんに関しては2駅先くらいまでターゲットエリアを広げていましたが、正しくという印象です。
そして何より、前述ですが「アンテナが強くコミュニティも強い」というのも大事なポイントです。
「○○さんに教えてもらってきました」「子供連れで行けるお店を検索して知りました」というお客さんがとても多く、土日はお子様連れのご予約で満席になります。
(最近はコロナの影響でお子様連れのお客さんは少なくなってしまっていますが)
「ハンバーガーが食べたいから」「ハンバーガーがおいしいから」というストレートなイメージだけでなく「子供連れでゆっくりご飯が食べたいから」という別確度のイメージを持てるかというのが飲食店を開業するうえで重要なポイントだと思うし、何より「自分がやりたいのはそういうこと」なんだなと実感する日々です。
もちろん、「美味しい」とか「お洒落」と言ってもらえるのはとても嬉しいですが、それ以上に「地域において必要な存在であること」も大切にしていきたいと思います。
開業前のコンセプトを練る段階では葛藤もありましたが、ハンバーガー屋では珍しい座敷席を用意したことは本当に重要な決断だったと思います。
数字の管理・把握が大変
正直、飲食店は扱う科目は多いけど基本的にはとてもシンプルなものだと思っていました。
しかし実際にやってみると、ウーバーイーツやら、クラウドファンディングやら、その他WEBプロモーションやら、カードなどの手数料やらで正確な売上と支出の管理がとてもややこしい!
大枠としては問題ないけど細かいところまでしっかり管理するとなるとそれぞれルールが異なるのでかなり手間がかかるなと。
もうWEB事業と比べると数字の管理は滅茶苦茶大変です…。
これは危機感を持って改善しなければと感じています。
原価率がやばい…
当初の予定より1.5倍ほど原価率が上がっています。
請求書が翌月に届くこともあり、最初に見た時は驚きました…。
売上の半分くらい仕入れ原価やん!と!(一般的な飲食店の原価は25-35%程度です)
で、確認してみたところ原因は、当初予定していたより高い材料を使っているとか、お肉の使える箇所が少なくなっているとか色々…。
ということで来月の現在のタスクは原価の調整になります。
単純に夜の売上(ドリンク)を上げるなど、問題の解決と同時にプラスの成長も大切になります。
とにかくWEBツールが使い辛い
僕の中でこれまでWEBと飲食の仕事を並行して続けてきた中で、いつかは飲食店にとって本当に価値のあるサービスをリリースしたいという思いがありました。
OPEN前に数か月時間があったこともあり、恐らく日本中のどこの飲食店よりもWEBサービスに関する打ち合わせ&説明を受けてきましたが…とにかく使い辛いものばかりで驚きました。
今使わせていただいている幾つかのサービスに関しても、我ながら本来の魅力の半分も使えていないなと実感しています。
単純に僕が設定作業が大嫌いというのもありますが、WEBの仕事をしている僕が使うのに一苦労(というか使いこなせない)するサービスを他の飲食店の方、特に年配の方の飲食店で使えるわけないじゃないかと。
とにかくお店を軌道に乗せて、そこで「こうすればもっと助かるのに」という課題を何年か掛けて蓄積して開発していきたい&パッケージ化して世界で販売したいという、随分先の目標としての考えてましたが…怒りでモチベーションが沸いてきました。
ただ、会社としての規模や余裕はもちろん、まだまだ僕自身がその目標の為に動くには能力が不足しすぎていることも実感したので、最近はWEBのほうのスキルアップも力を入れるようになっています。
お店をやってみたメンタル面
息抜きのつもり書き始めたらかなり長文になってしまっていますが…すごく大事なメンタル面のことを最後に。
意外と軽視されやすい経営者のメンタル面ですが、実際はそこを理由に廃業する人もとても多いです。実際に飲食店を開業した知人のなかにも数人います。
で、まだ3カ月半ですが…「思ってたよりすごく楽しかった」です。
イメージが悪すぎたのかもしれませんが、OPEN一年前くらいはそれまでの「充実したライフスタイルを失う」というのが本当に嫌でした。お店をやりたくなくて涙が出て来る日もありました。
給料は3分の1になり、労働時間は3倍という笑ってしまうような変化ですが、自分が学生の頃にぼんやり抱いたものが形になって、そこにいるのだから「仕事している」という感覚というより「やりたかったことやっている」だけなので、労働時間という感覚はないし、収入に関してもそもそも使う機会ないから全く生活は困らないです。
もちろん、3年後も今の報酬だったら将来を考えますが今のところは良いかと(役員報酬なので売り上げに関係なく一年間固定です)
でも、今はそう思えるのも沢山のお客さんと仲間に支えてもらえたからだなと実感します。
OPEN前はバタバタでとても疲れ果てていたけど、それは肉体的なことではなくて「お店をOPENしてやっていけるだろうか、蒲田でグルメバーガーは受け入れられるのだろうか、お客さんは来てくれるのだろうか」という自信がなかったからこそのメンタルからくるものだったと思います。
もっとワクワクしたい
超忙しく思われがちというか想像してたけど、実は労働時間的には大したボリュームではないんですよね。
朝は11:30にお店に着いて、24:30くらいにお店を出るとして、お店にいるのは13時間だけで、それが週六日と計算すると13時間×25日=325時間だけ。
もちろんそれ以外の時間もブラシュアップするために考えるし、店舗が休みの日や帰宅後はWEB事業のほうをガッツリやるわけだけど、週一でやるくらいなら良い気分転換。
何となくお店をOPENしたら寝る時間もないというか、それくらい頑張らなくては成り立たないものという印象だったからビビってたけど、思ってたより余裕というか、どこにでもいるブラック企業のサラリーマンくらいなものでした。
でも本当にただただ楽しいというか幸せな毎日だなあということに気付いてしまい、ドMな僕としては逆にふわふわしてきてしまったように感じたのがお店が落ち着き始めた2月中旬くらい。
お店の流れも出来てきて、お客さんも増え続けて、バイトの子たちも増えてきて、社員の入社も決まって、課題はまだまだ沢山あるけれど「一個づつ整理して改善するだけ」というところまで見えてきたら同時に気持ちも落ち着いてしまいました。
そんなこんなで3月からはお店には一度も立たずに、助成金の申請や、WEB施策のチューニング、今後への種まきなどを行ってきました。
そして4月からはAIやIoTを活用した飲食店作りという他社のプロジェクトを請け負います。
AIもIoTも全く経験はないけど、だからこそ死ぬ気でレベルアップするしか生き残れない。そんな環境を望んでいたのだなと。お店をOPENするということはそういう環境に自分を置けると思っていたけれども、このままお店の運営に尽力しているだけでは血反吐を吐きながら気を失うまで頑張る…というイメージが持てないなと。
現実的なコロナ問題
WEB・IT業界での経験を活かした「店舗作り」というのがやりたいことの一つだったけど実現するには会社の規模も資金力も、僕自身のスキルも足りない状況で、最先端の技術の中で実績を積みながら資産も増やすというのは、この会社にとってベストな時期だろうと考えました。
そして、今週末は不要不急の外出を控えるようにと都知事からの要請が発表されるなどもあり、ここ数日は、徐々に当店でもコロナの影響を感じるようになってきました。
結果論ですが、これからどのようになっていくのか分からないという世界全体が混乱しているタイミングで、IT事業という確実なマネタイズのポイントを用意できたのは、弊社のような零細企業にとっては不幸中の幸いかもしれません。
お店のほうは徐々にですが形も固まってきて、アルバイトも増えて、4月からは社員も増えて…という中で夏頃には2店舗目やキッチンカーなど新しいことに挑戦していきたいと考えていましたが、まずはコロナがどうなっていくか…。終息したとしてもその後の経済活動に大きな影響を与えることになるのは間違いありません。
皮肉にも先月までと比べて良い物件が出回り始めているけれど、同時に難しいタイミングとなってしまいました。
どちらにしても2店舗目を始めるには従業員の質を上げていくことがマストで、コロナ問題がどうこうは関係なく弊社の課題は変わりません。
とにかく今は人によっては大変な状況の中で、自分たちはなにが出来るのかを考えながら地元の人にとって少しでも価値のあるものを提供できるよう頑張りたいと思います。